東京地方裁判所 昭和38年(ワ)5643号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔争点〕被告から原告らに対する債務名義として和解調書が存在し、その和解条項第四項に、「原告高尾及び原告株式会社丸高製材所は被告の書面による同意なくして本件土地上にある本件建物の増改築をしない」旨の記載がある。そして原告高尾が昭和三八年四月、本件建物中の一棟を取りこわし、その敷地を含む本件土地の一部に新たな建物の建築工事に着手したので、被告は右新築工事が前記特約に違反したものであることを理由に、本件土地賃貸借解除の意思表示をし、原告らに対する建物収去および退去、土地明渡の強制執行のため、本件和解調書に執行文の付与を受けた。そこで原告から、請求異議および執行文付与に対する異議を申立てたが、その争点の一つとして、前記特約の借地法上の効力が問題とされた。
〔判決理由〕本件特約は借地法一一条により無効であるという主張について。同法第二条、第七条によれば、借地権の存績期間中に既存建物が滅失した場合においても借地権は消滅せず、借地権者は契約で定めた使用目的に反しない限り、貸主が異議を述べたと否とを問わず、残存期間を超えて存続すべき建物であつてもこれを築造することができるものであつて、第七条所定の「滅失」中には借地権者の任意の取毀による場合も含まれているものというべきである。そして同法第一一条によれば、第二条、第七条の規定に反する契約条件にして借地権者に不利なものは無効であるから、貸主と借主との合意を以て、借地人が既存建物を取毀してその跡に新たに建物を築造するのを禁じ、又は、そのために賃貸人の同意を要するものとすることは同条に反し、第一一条により無効とされる。従つて、本件特約中増築及び建物の滅失を伴わない程度の改築の点は暫く措き、少くとも全面的改築が、被告の書面による同意なくしてはなし得ないと定めている部分は、特段の事情がない限り無効であるというべきである。この点に関し、被告は、本件特約は増改築の全面的禁止ではなく具体的事情を考慮して賃貸人である被告がこれに同意することもあり得るから同法に反しないと争うが、その失当であることは右の説明から明らかである。更に被告は、本件特約は本件賃貸借契約の当初になされたものではないから有効であると主張するが、ある特約が借地法に反するか否かはその内容自体について判断すべきであり、それがなされた時期は問題にならないから、右主張も失当である。(石田実 磯部喬 松井賢徳)